後遺障害等級とは?認定を受けるまでの流れと等級一覧

後遺障害等級認定の流れ

交通事故で身体のさまざまな部分に後遺症が残ったら「後遺障害等級認定」を受けるべきです。
そのためには「後遺障害診断書」を入手した上で「事前認定」または「被害者請求」の方法で手続きをする必要があります。
どちらの方法が適しているかはケースによって異なるので、弁護士に相談して、適切な方を選択しましょう。また認定を受けられなかったときには異議申立てをすることも可能です。

後遺障害とは

後遺障害とは、交通事故による怪我が元となり、治療を行っても事故前の状態には改善しない症状のことです。

こうした事故後の怪我の影響で身体に残る症状について、一般的には「後遺症」という言葉が使われますが、すべての後遺症を「後遺障害」と呼べるわけではありません。

残った機能障害・神経症状が、自賠責保険に定められた等級条件を満たす場合「後遺障害等級認定」の手続き~審査を経て、認定されてはじめて、その後遺症は後遺障害とみなされます。

後遺障害等級認定とは

後遺障害等級認定とは、交通事故による後遺症を、正式に「後遺障害」として認定する手続きです。
後遺障害等級認定を受けることで、交通事故で受けた怪我の後遺症に対する、適切な損害賠償・補償を受けることができます。

交通事故に遭うと、身体のさまざまな部分に「後遺症」が残ってしまうことがあります。
たとえば目が見えなくなったり耳が聞こえにくくなったり、身体の一部を動かせなくなったりすることがありますし、痛みやしびれなどの症状がとれずに残るケースもあります。

後遺症は等級認定を受けることで「後遺障害」と認められる

こうした辛い後遺症が残ったとき、相手から適切な補償を受けるためには「後遺障害等級認定」を受ける必要があります。
交通事故後の後遺症は、この等級認定を受けることで正式に後遺障害として認められます。

後遺障害には1級から14級までの「等級」があります。交通事故の後遺症にはさまざまな程度のものがあるので、等級によって分類されています。
1級が最も重く、植物状態となって全身を動かせないときや両眼を失明したとき、両腕を根元から失ったときなどに認められます。
数字が上がるとだんだん軽くなって14級がもっとも軽く、たとえば自覚症状しかないむちうちのケースなどで認定されます。

後遺障害の等級一覧表

後遺障害等級 各等級にあたる後遺障害の内容は、自動車損害賠償保障法施行令に等級表として明記されており、以下の通りとなります。

介護を要する後遺障害
等級 介護を要する後遺障害
第一級
  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第二級
  1. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
  2. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
後遺障害の等級
等級(解説記事リンク) 後遺障害
第一級
  1. 両眼が失明したもの
  2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
  3. 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
  4. 両上肢の用を全廃したもの
  5. 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
  6. 両下肢の用を全廃したもの
第二級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  2. 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  3. 両上肢を手関節以上で失つたもの
  4. 両下肢を足関節以上で失つたもの
第三級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
  3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
  5. 両手の手指の全部を失つたもの
第四級
  1. 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 両耳の聴力を全く失つたもの
  4. 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
  5. 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
  6. 両手の手指の全部の用を廃したもの
  7. 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第五級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  4. 一上肢を手関節以上で失つたもの
  5. 一下肢を足関節以上で失つたもの
  6. 一上肢の用を全廃したもの
  7. 一下肢の用を全廃したもの
  8. 両足の足指の全部を失つたもの
第六級
  1. 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
  3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
  4. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
  6. 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  7. 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
  8. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
第七級
  1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  3. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
  6. 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
  7. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
  8. 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
  9. 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  10. 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  11. 両足の足指の全部の用を廃したもの
  12. 外貌に著しい醜状を残すもの
  13. 両側の睾丸を失つたもの
第八級
  1. 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
  2. 脊柱に運動障害を残すもの
  3. 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
  4. 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
  5. 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
  6. 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  7. 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  8. 一上肢に偽関節を残すもの
  9. 一下肢に偽関節を残すもの
  10. 一足の足指の全部を失つたもの
第九級
  1. 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
  3. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
  6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
  7. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  8. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
  9. 一耳の聴力を全く失つたもの
  10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
  12. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
  13. 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
  14. 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
  15. 一足の足指の全部の用を廃したもの
  16. 外貌に相当程度の醜状を残すもの
  17. 生殖器に著しい障害を残すもの
第十級
  1. 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
  2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
  4. 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
  6. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
  7. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
  8. 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
  9. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
  10. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
  11. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第十一級
  1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
  4. 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
  6. 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
  7. 脊柱に変形を残すもの
  8. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
  9. 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
  10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第十二級
  1. 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
  2. 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
  3. 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  4. 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
  5. 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
  6. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  7. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
  8. 長管骨に変形を残すもの
  9. 一手のこ指を失つたもの
  10. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
  11. 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
  12. 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
  13. 局部に頑固な神経症状を残すもの
  14. 外貌に醜状を残すもの
第十三級
  1. 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
  2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
  3. 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
  4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  5. 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  6. 一手のこ指の用を廃したもの
  7. 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
  8. 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
  9. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
  10. 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
  11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第十四級
  1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
  2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
  3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
  4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
  6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
  7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
  8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
  9. 局部に神経症状を残すもの
参考記事リンク

後遺障害等級認定制度が作られた目的

交通事故の後遺症には、さまざまな症状がありますし、程度もケースによってさまざまです。個別にいちいち損害賠償金を計算すると、同じような事故でも異なる金額の補償となって不公平になる可能性が高まります。

そこで後遺障害の統一認定基準を作り、その基準によってすべての交通事故被害者の後遺症を一律に判定し、認定基準に合致する人については同じ内容の補償を受けられるようにしています。そのための制度が後遺障害等級認定です。

これを被害者目線で見てみると、交通事故で後遺症が残ったとき、「後遺障害として認定されなければ後遺障害の補償を受けることができない」ということになります。そこで交通事故後、後遺症が残って完治しないことが明らかになったら、必ず後遺障害認定を受けるべきです。

後遺障害等級認定を受けることによって支払われる賠償金

後遺障害等級認定を受けると、被害者には以下の2種類の賠償金が支払われます。

  • 後遺障害慰謝料
  • 後遺障害逸失利益

後遺障害慰謝料とは

後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことによって被害者が受ける精神的苦痛に対する損害賠償金です。交通事故で後遺障害が残ると、被害者は身体を自由に動かせなくなって日常生活にも支障が及びますし、仕事もできなくなったりして大きな精神的苦痛を受けます。そこで、後遺障害認定されると「後遺障害慰謝料」を支払ってもらえます。

後遺障害が残ったことによる精神的苦痛は、後遺障害の程度が同じであれば誰でも同程度になると考えられています。年齢や収入、性別などによって精神的苦痛が変わることはありません。そこで、後遺障害慰謝料の金額は、等級ごとに相場の金額を決められており、高い等級になれば高額な慰謝料が支払われます。被害者の年収や年齢、性別などの属性による影響は受けません。

後遺障害逸失利益とは

後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残ったことで得られなくなった将来の収入です。後遺障害が残ると、身体が不自由になったり精神症状が出たりして、それまでと同じようには働けなくなる方が多いです。すると、減収が発生したり将来の昇進や転職が困難になったりして生涯収入が低下します。

このような減収は、交通事故がなかったら発生しなかったものですから、交通事故にもとづく損害賠償金として相手に支払いを求めることができます。

後遺障害逸失利益は、後遺障害による減収分なので、認められるのは基本的に事故前に働いていた人のみですし、その人の年齢や年収によって金額が変わってきます。等級が上がると労働能力喪失率が上がるので全体的に金額が上がりますが、慰謝料とは違い、個別の被害者の状況によって大きく金額が変わります。

後遺障害慰謝料や逸失利益は、認定等級にもよりますが非常に高額になります。等級が高くなると後遺障害慰謝料は2000万円を超えますし、逸失利益が1億円を超えることも珍しくありません。

後遺障害認定を行う機関

被害者が後遺障害認定を受けたい場合、どこに申請をすれば良いのでしょうか?

認定を行っているのは「自賠責保険・共済」です。そこで、交通事故で後遺症が残ったら、加害者の自賠責保険や共済組合に対して後遺障害等級認定の請求をします。自賠責保険は、1級から14級までの後遺障害認定基準を作っており、申請を受けるとその基準に該当するかどうかを調査します。該当するなら後遺障害認定をして等級を決定します。該当しないなら「非該当」と判断して申請を却下します。

後遺障害等級認定の2つの方法

交通事故の被害者が後遺障害認定を受けたいとき、2種類の方法があります。1つは事前認定、もう1つは被害者請求です。それぞれについて説明します。

事前認定

事前認定とは、加害者の任意保険会社に後遺障害等級認定の手続きを任せる方法です。

任意保険会社は、自賠責保険の保険金支払いについても窓口となって対応することができます。このことを「一括対応」と言います。そして一括対応しているときには、任意保険会社が後遺障害についての保険金支払いも一括して行います。その一環として、前提となる後遺障害等級認定も任意保険会社が行うことができるのです。

事前認定の場合、決定した保険金は、示談成立時に任意保険会社から他の賠償金と合わせて一括で支払われます。

被害者請求

被害者請求とは、被害者自身が自賠責保険に対して後遺障害等級認定請求を行う方法です。任意保険会社は関与せず、被害者と自賠責保険が直接やりとりをしながら手続を進めます。保険金の給付が決定したら、自賠責保険から直接被害者へと支払われます。

後遺障害等級認定を受ける手順

後遺障害等級認定を受けるためには、具体的にどのような手順で進めれば良いのか、説明します。

  1. 症状固定まで治療を行う
  2. 後遺障害診断書を取得する
  3. 事前認定の場合

加害者の任意保険会社へ後遺障害診断書を提出する
加害者の任意保険会社から結果の通知を受ける

  1. 被害者請求の場合

被害者が自分で必要書類を揃える
加害者の自賠責保険へ申請書と資料を提出する
損害保険料率算出機構・調査事務所で調査が行われる
被害者に結果の通知が来る

以下で、各段階について詳しく説明していきます。

症状固定まで治療を行う

事前認定の場合でも被害者請求の場合でも、後遺障害認定の前提として「症状固定」するまで治療を継続することが必要です。

症状固定と症状固定時期の決め方

症状固定とは、それ以上治療を続けても、症状が改善しなくなった状態です。症状固定した時点で残っている症状が、自賠責の「後遺障害等級認定基準」に合致していれば、後遺障害として認定されます。

症状固定時期を判断するのは、治療を担当している医師です。症状に改善の見込みがあるかどうかという問題は医学的な見地から判断する必要があるためです。医師の方から「そろそろ治療を終了しても良い」と言われることもありますが、患者の方から「治療はいつまでかかりますか?」と尋ねてもかまいません。すると医師から「あと〇か月くらいの見込みです」「今のところ、明らかではありません」「そろそろ終了する頃です」などと返答を受け、相談しながら症状固定時期を判断することになります。

手術を受けるか症状固定するか

症状固定時期をいつに設定するかは、後遺障害等級認定を受けられるかどうか、何級になるかという重要な事項に対して大きな影響を持つことがあるので、注意が必要です。

たとえば、交通事故の被害者が手術を受けるかどうか迷うケースがあります。後遺症の内容によっては、リスクを伴うけれど、改善の見込みのある手術方式があるからです。そのようなとき、手術を受ければ術後のリハビリが終わるまで、症状固定しません。また、手術によって実際に改善を得られれば、改善した状態で症状固定して、そのときの状態を前提に後遺障害等級認定を受けることとなります。

もし手術を受けなければ、その時点で早期に症状固定をします。後遺障害認定は、術前の症状が残っている状態に対して判断されます。

このように手術を受けるかどうかにより、症状固定時期や認定等級が変わってくるケースがあります。治療を受けてある程度症状が固まった後に、効果が確実ではない手術を受けるときには、「リスクを伴う」という医学的な問題だけではなく、後遺障害認定の結果も変わってくる可能性に配慮が必要です。医師だけではなく後遺障害に詳しい弁護士にも相談して、手術を受けるべきか決定するのが良いでしょう。

後遺障害診断書を取得する

後遺障害診断書は、後遺障害認定で非常に重要視されている

症状固定するまで治療を続けたら、医師に依頼して「後遺障害診断書」を作成してもらう必要があります。後遺障害診断書とは、後遺障害の内容に特化した診断書です。全身の後遺障害の内容について、詳しく書き込むための書式が用意されています。後遺障害診断書は、事前認定の場合にも被害者請求の場合にも必要です。

後遺障害診断書は、自賠責の後遺障害認定において、極めて重要視されています。そこに書かれている文言1つで、後遺障害が認定されたりされなかったりしますし、等級が変わる可能性もあります。そこで、作成の際には慎重な対応が必要です。

被害者が診断書の内容を指示できるものではない

それでは、被害者は後遺障害診断書作成にどのように関わることができるのでしょうか?

後遺障害診断書は被害者ではなく医師が作成する書面なので、基本的に被害者が医師に「このように書いてほしい」と指図できるものではありません。患者の立場から医師に対し、あまり診断書の内容について指示したり文句を言ったりすると、医師に対して失礼になってしまい、協力してもらえなくなる可能性もあるので注意が必要です。

効果的な後遺障害診断書の作成方法

後遺障害認定のために効果的な後遺障害診断書を作成するためには、あなた自身が自覚している症状について、正確に詳しく説明し、医師に理解してもらうことが重要です。また、検査結果などについても、できる範囲で理解して、正確に診断書に反映されているかどうかを確認しましょう。気になることがあったら、医師に失礼にならないように「これはどういう意味ですか?」と聞いて教えてもらうと良いでしょう。

また、なるべく交通事故の後遺障害認定に詳しい医師に診断書を書いてもらう方が安心です。医師の中には交通事故トラブルに巻き込まれることを嫌い、後遺障害診断書の作成に消極的な人もいます。交通事故の被害者に協力的で、これまでにも後遺障害診断書を書いた経験のある医師に作成してもらうのが好ましいです。

弁護士に依頼すると、弁護士が医師に説明をしてくれることがある

弁護士に後遺障害認定を依頼していると、弁護士から医師に後遺障害診断書の作成方法や注意点を連絡してもらうことも可能です。このことにより、適切な等級が認定される可能性が高まるので、より確実に後遺障害認定を目指したいならば、弁護士に相談してみましょう。

後遺障害診断書を作成したいときには、保険会社に依頼して自賠責の後遺障害診断書の書式を送ってもらいます。弁護士に依頼している場合には、弁護士が書式を持っていることが多いので、1部渡してもらうと良いです。

事前認定の場合

後遺障害診断書を入手した後の後遺障害申請手続は、事前認定か被害者請求かによって異なります。

加害者の任意保険会社へ後遺障害診断書を提出する

事前認定の場合には、後遺障害診断書を加害者の任意保険会社の担当者へと送付するだけで申請手続きが終了します。その後、任意保険から自賠責保険へと書類が回り、自賠責保険において後遺障害の有無や内容、程度について調査が行われ、結果に応じて後遺障害への該当性や等級が判断されます。

加害者の任意保険会社から結果の通知を受ける

後遺障害に該当する場合には、任意保険会社から認定等級を通知されます。非該当となった場合にも、その旨の連絡があります。

被害者請求の場合

被害者請求の場合には、後遺障害認定の手続きはより複雑になります。

被害者が自分で必要書類を揃える

被害者請求の場合、任意保険が関与せず、すべての手続きを被害者本人が進める必要があります。そこで、申請前に、自分で必要書類を揃えなければなりません。

まずは、自賠責保険に連絡を入れて、保険金請求用の書類一式を送ってもらいましょう。そして、自分で書類を作成し、必要な資料を集めていきます。

被害者請求に必要な書類一覧

後遺障害等級認定の一般的な必要書類は、以下の通りです。

保険金請求書

自賠責保険に対し、保険金の支払いを請求するための書類です。保険会社から送られてきた書式に入っているので、氏名や住所、振込先の金融機関の口座など、必要事項を書き込みましょう。ここで指定した銀行口座に対し、後に後遺障害認定を受けた後の保険金が支払われますので、都合の良い「被害者名義の口座」を指定しましょう。

交通事故証明書

交通事故安全センターにて取得します。郵便局に行けば、郵送で申請することも可能です。

事故発生状況報告書

事故状況を、図面入りで説明するための書面です。自賠責に書式があるので、被害者が自分で記入して作成します。

診断書、診療報酬明細書

これまでの治療経過を証明するために必要です。診断書は、後遺障害診断書とは異なり、これまで病院が作成してきたものです。病院で保管されているので、かかっている病院に照会して取り寄せる必要があります。複数の病院にかかっている場合、すべての病院に照会して入手します。

休業損害証明書

会社員や公務員の方などで休業損害が発生している場合、勤務先に申請して作成してもらいましょう。

通院交通費証明書

通院交通費が発生している場合には、明細書を作成して提出する必要があります。

検査結果の資料

MRIやCT、レントゲンなどの画像データを始めとして、検査結果のデータや資料を提出する必要があります。

他にも、脊髄損傷のケースなら「脊髄症状判定用」という書類、高次脳機能障害などの脳障害の場合には「頭部外傷後の意識障害についての所見」「神経系統の障害に関する医学的意見」「日常生活状況報告書」などの書類を用意して提出する必要があります。

これらの書類はすべて後遺障害認定の際に極めて重要な資料となりますので、適切な作成方法がわからない場合には、弁護士に相談しながら作成しましょう。

また、上記の必要書類以外にも、医師に後遺障害の症状について意見書を作成してもらったり補足の意見書や陳述書その他の資料をつけて提出したりすることも可能です。このように、被害者請求の場合には必要書類が非常に多くなりますが、被害者が自分の裁量で有利になる書類を追加提出できるメリットがあります。

加害者の自賠責保険へ申請書と資料を提出する

必要書類の作成と収集を終えたら、まとめて加害者の自賠責保険へと送付します。

損害保険料率算出機構・調査事務所で調査が行われる

必要書類を揃えて申請をすると、自賠責保険が損害保険料率算出機構に資料を回し、調査事務所によって後遺障害についての調査が開始されます。調査の最中には、被害者に対し問合せの連絡が入ることがあります。また、外貌醜状の後遺障害の場合など、被害者が調査事務所に行って調査員との面談が行われるケースもあります。

自分1人でうまく対応できない場合には、弁護士に依頼する必要性が高くなります。

被害者に結果の通知が来る

調査が済んで後遺障害認定が降りると、自賠責保険から被害者に対して直接結果が通知されます。

後遺障害の等級が認定されると、認定された等級に応じて自賠責保険から即時に保険金が入金されます。非該当になったら、保険金は支払われません。

後遺障害認定にかかる期間

後遺障害認定にかかる期間は、だいたい2~4か月程度です。

事前認定と被害者請求で、どちらが早いということもありません。ただ事前認定の場合、任意保険の担当者がテキパキと対応してくれないと遅くなる可能性はあります。被害者請求の場合にも被害者が準備に手間取ると遅くなります。

また、難しい症状の事例や因果関係などが争いになるケースなどでは調査のために期間が長くなります。

事前認定と被害者請求のどちらが良いのか?

後遺障害認定を受けるとき、事前認定と被害者請求のどちらが良いのでしょうか?それぞれのメリットとデメリットを確認しましょう。

事前認定のメリット

手続きが簡単

事前認定のもっとも大きなメリットは、手続きが簡単なことです。後遺障害診断書を任意保険の担当者に送れば手続きが完了し、それ以上何も対応する必要はありません。

事前認定のデメリット

自分の裁量で手続きを進められない

事前認定の場合、被害者が自分の裁量で手続きを進められません。被害者に有利な資料を適宜追加的に提出するなどの対応は困難です。

被害者に不利な証拠を提出されてしまうことがある

場合によっては、任意保険会社が自社の産業医に被害者に不利な内容の意見書を書かせて提出することもあります。任意保険会社にとっては、後遺障害認定されない方が、支払う賠償金が安くなって経済的だからです。

手続きが不透明

事前認定は、被害者にとってブラックボックスで手続きが不透明です。相手の保険会社がどのようなことをしているのかわからないので不安感があります。

被害者請求のメリット

被害者が自分の裁量で手続を進められる

被害者請求の場合、被害者が自分に有利な資料などを集めて積極的に提出し、後遺障害認定につなげやすいです。

手続きの透明性が保たれる

自分で請求手続を行うので、手続きの透明性が保たれて安心です。

争いのある事案では後遺障害認定されやすい

後遺障害の症状や因果関係などに争いがある事案では、被害者請求で被害者が積極的な立証活動をすることにより、認定を受けやすくなる可能性があります。

被害者請求のデメリット

手続きが面倒

被害者請求の大きなデメリットは、手続きが面倒なことです。必要書類も非常に多いですし、作成しなければならない書類もあります。すべての書類を適切に揃えないと、申請すらできないので、手続きがどんどん遅れてしまいます。

うまく活用できないケースもある

被害者請求は、うまく制度を活用できて自分に有利な資料を提出できれば効果的ですが、活用できないならば面倒なだけの手続です。
被害者一人で対応できない場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談して対応してもらうのが良いでしょう。

すぐに支払いを受けられる

被害者請求の場合、認定を受けられたらすぐに保険金が支払われます。事前認定のように、示談成立を待つ必要がありません。

事前認定すべき場合

事前認定によって後遺障害認定請求すべき場合は、以下のようなケースです。

  • 後遺障害に該当する症状や交通事故と症状の因果関係が明らか
  • 後遺障害の内容や程度が軽微

被害者請求すべき場合

以下のようなケースでは、被害者請求を推奨します。

  • 後遺障害に該当する症状を証明する資料が確実とは言えない
  • 症状があることは確実でも、何級になるかが明らかではない
  • 交通事故と症状との因果関係が明らかになっていない
  • 後遺障害の内容や程度が重大

確実に後遺障害認定されるとは言えない場合や、後遺障害の内容が重大な場合には、弁護士に依頼して被害者請求の方法で後遺障害認定を受ける方が確実です。

後遺障害が認定されなかった場合の対処方法

事前認定の場合でも被害者請求の場合でも、後遺障害認定申請結果に納得できないことがあります。期待していたよりも認定された等級が低かった場合や「非該当」となった場合です。

このような場合、後遺障害認定結果を争う方法があります。

異議申立て

異議申立てとは

後遺障害認定を受けられなかったときにまず考えられるのは「異議申立て」という手続きです。異議申立てとは、自賠責保険に対して後遺障害認定の再審査を求める手続きです。異議申立てを受け付けて審査するのは、一度目に認定したのと同じ自賠責保険です。再審査の際に、後遺障害に該当する症状と事故との因果関係をきちんと証明できれば、認定結果を変えてもらえる可能性もあります。

ただし同じ機関が判定するので、一度目と同じ方法で申請しても、認定結果が変わる可能性は低いです。異議申立てを成功させるためには、なぜ思うような認定を受けられなかったのか、その敗因をしっかり分析した上で、一度目とは異なる、新たな診断書や検査結果などの資料を入手して提出する必要があります。

異議申立てから被害者請求に変更できる

また、一度目に事前認定を利用して低い等級や非該当になった場合には、異議申立ての際に被害者請求に変更して後遺障害認定請求することをお勧めします。事前認定ではただでさえ被害者の裁量をきかせにくいので、再審査を請求しても、なかなか認められないからです。事前認定から被害者に切り替えるときには、上記で説明した被害者請求用の書類一式を自賠責保険へ提出する必要があります。

異議申立のタイミングや回数について

異議申立には、期間制限や回数制限はありません。いつでも再審査請求できますし、何度やってもかまいません。ただし、証明方法を工夫しない限り何度請求しても同じことになるでしょうし、示談交渉が進んでいくので、早めに手続きをとる必要があります。

自賠責保険・共済紛争処理機構

異議申立をしても後遺障害認定結果が変わらなかった場合には、自賠責保険・共済紛争処理機構という機関に申し出ることにより、後遺障害認定結果を変えてもらえる可能性があります。

自賠責保険・共済紛争処理機構とは、自賠責保険における決定内容や保険金支払いに関するトラブルを解決するための、裁判外の紛争解決機関です。後遺障害認定は自賠責保険や共済における決定事項なので、それに関する不服がある場合、機構に申し出ると「調停」をしてもらうことができます。

自賠責保険・共済紛争処理機構における調停は、裁判所などの調停のような「話合い」ではありません。基本的に「書面審査」となり、当事者が出席する必要もなく、機構で結果を判断して通知されます。自賠責保険や共済は、自賠責保険・共済紛争処理機構による決定内容に従うので、機構によって等級が変更されたり後遺障害への該当性が認められたりすると、認定された等級に応じた保険金が支払われます。

訴訟

後遺障害認定結果に納得できない場合には、裁判(訴訟)によって解決することもできます。訴訟を起こすと、裁判所が後遺障害に該当するかや、該当する場合の等級を判断してくれます。

裁判所の判断基準は自賠責の判断基準と必ずしも一致しないので、自賠責で後遺障害認定されなかった場合でも、後遺障害が認められるケースがあります。ただ、裁判で後遺障害認定されるには、裁判所が納得できるように後遺障害の症状や因果関係をしっかり主張立証しなければなりません。被害者1人では到底対応できないので、必ず弁護士に依頼しましょう。

交通事故で後遺症が残ったときに後遺障害認定を受けるには、交通事故に精通している弁護士に対応してもらって被害者請求をすべきケースが多いです。お困りの場合、お早めに弁護士に相談してみて下さい。

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